コラム
経済ジャーナリスト荻原博子さんに聞く!これからの賢いポイント活動とは

給料が思うように上がらないのに対し、近頃、物価がどんどん上昇しています。さらに円安やエネルギーの供給不安なども追い打ちをかけ、2022年は例年以上に寒い冬を迎えそうだという人も多いのではないでしょうか。
そんな時に私たちの味方になってくれそうなのが、買い物などをするともらえるさまざまなポイントです。このポイントをためたり使ったりする活動、いわゆる「ポイ活」の賢い立ち回り方について、経済ジャーナリストの荻原博子さんに聞いてみました。
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取材
荻原博子(おぎわらひろこ)
経済ジャーナリスト。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。現在は新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。著書に『荻原博子の貯まる家計』(毎日新聞出版)、『投資なんか、おやめなさい』(新潮新書) など多数。
公式ホームページ:http://www.ogiwarahiroko.com/

新刊情報『老後の心配はおやめなさい』(新潮社)発売日:2022年08月
今後さらに家計をひっ迫する物価の高騰
「消費者物価指数(2017~2022年)」を見ると、2022年9月は前年同月比で「総合」が+2.8%、「生鮮食品を除く総合」は+2.8%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は+1.7%上昇していることがわかる。
このように、エネルギーの高騰が、産業や暮らしの基礎的なコストを上昇させ、家庭経済に大きく影響している。この上昇は今後もしばらく続く見通しだ。

出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「国内統計:消費者物価指数」をもとに作成
今やお金と同じになった「ポイント」
――クレジットカードでの支払いや特定の店舗の利用、ネット通販での商品の購入など、私たちの生活のあらゆるところで「ポイント」がつくようになっています。荻原さんはポイントは「第二の通貨」とおっしゃっていますが、これはどういう意味でしょうか?
荻原 たとえば1万円の買いものをするときに、たまっているポイントを支払いに充てることで、8,000円で商品を買った場合、ポイントは2,000円のお金と同じことになりますよね。つまりポイントはお金と同じ役割を果たすことができるので、通貨的な存在になっているということです。
――たしかに現金やクレジットカードとともに、支払いはポイントでというのはよく行われていますね。
荻原 今はポイント還元を導入する企業が本当に増えてきましたよね。毎日のように行くカフェやコンビニのポイントカードを持っている人は多いし、主婦は買いものに行くお店のポイントをよく利用しています。今ではポイントをためたり、たまったポイントで支払いをするというポイ活は、日常生活で普通に行われていますよね。
こういった買いものだけでなく、たとえば金融商品への投資にポイントを利用できることもあります。私は日ごろから、金融商品への投資は資金に余裕があるときにすべきだといっています。投資にはリスクがありますから。でも、たまったポイントであれば、たとえ投資元金を割り込んでも大きな損失にはならないと思いますので、興味があればチャレンジしてみるのもよいでしょう。
【年々増加するポイント発行額】
2016年以降の民間発行額は、2020年はコロナ禍によって減少しているものの、年々増加傾向にあり、2025年には1兆3000億円を突破すると推測されている。またマイナポイント関連やGoToEatキャンペーンなど、行政主体の発行額も民間発行額に匹敵する勢いだ。

――ところで、ご自身もポイ活はされていますか?
荻原 もちろん(笑)。近所のよく行くスーパーで買いものをするとポイントがつくので、それをすぐ次の買いものの時に使っています。また飛行機のチケットはJALカードでマイレージをためて、それをポイントに換えていますし、ポイント還元率が10%と高いビックカメラのクレジットカードは、大きな買いものの時に利用しますね。20万円の冷蔵庫を買って、2万円分のポイントがもらえるのは大きいですよ。もうポイントを提供する側の思惑にはまっている状態ですね(笑)。
――ポイントを提供する側の思惑というのは……?
荻原 ポイントというのは、消費者のデータを収集するなど、目的があって発行するものです。たとえば自治体のなかには、歩いた歩数に応じてポイントを付与しているところがありますが、これもウォーキングを奨励してみんなに健康になってもらい、その分医療費を減らそうという思惑があってやっていることなんです。でも自分も向こうも得するWIN-WINの関係なら、その思惑に乗ってしまってもいいんですよ。
【ポイント還元を利用し市民の健康促進を図るしくみ】

自治体によってサービス内容は異なるが、例えば、スマホに専用アプリをダウンロードし、ウォーキングやランニングなどをするこで、歩数が計測され、自治体からポイントが還元される。ポイントはポイントに応じた賞品との交換や、賞品やサービスが当たる抽選などに利用できる。
本末転倒のポイ活に要注意
――じつは私たち編集部ではポイ活に関して1000人にアンケート調査を行なったのですが、それによるとポイ活をしている人は全体の7割でした。年代別にみると、バブル世代(53歳~57歳)がよくポイ活しているに対し、Z世代(18歳~22歳)はポイ活に対して少し意識が低いようです。この結果を荻原さんはどうみますか?
【世代別 ポイント活動に対する意識調査】

出典:MoneyGeek「クレジットカードの1000人調査!財布にある枚数や現金の額など、世代別でギャップまとめ」より
荻原 20~30代は堅実で、とにかくお金を使わない傾向がありますね。車も持たないし、大型家電も買わない、音楽もダウンロードやサブスクだし……。だから、ポイ活にも熱心ではないのかもしれません。でも私は彼らにこそ日本の未来があると思っています。
――そうおっしゃる理由は何でしょう?
荻原 本当は、自分の身の丈を知って堅実な生活をするのが当然なのに、消費をしなければ経済が回らないとマスコミや評論家にあおられて、使わなくてもいいお金を使っている人が多いですよね。
とくに50代は、家や車、教育などのローンがまだいっぱい残っているのに、ワンランク上とか自分にごほうびとかいって背伸びしてお金を使っていますけど、それでは将来が危ないといえます。だって給料は上がらないし、ひょっとすると年金はもらえないかもしれないんですよ。
それに対し、若い人はスマホ1台あれば十分楽しめるし、かといってみじめな生活をしているわけでもない。ポイ活に関しても、50代はポイント2倍とかいくら以上買ったらボーナスポイントプレゼントなんていうのに踊らされやすいのですが、それは本末転倒です。
――本末転倒ですか……。それってどういう意味ですか?
荻原 ポイントはどこでもやっているし、なんでも付いてきます。でもそれは、お金を使ったついでに付けてもらうものであって“ないよりはあった方がまし”くらいの感覚がポイ活の基本だと思います。それをポイント目当てに買いものをすると、買わなくてもいいものまで買ってしまって、使わなくてもいいお金をムダに使ってしまうことになります。それだとポイ活が暮らしの味方にはならないですよね。
――おっしゃる通りで、自分も200円買わないとポイントがつかないというので、よくコンビニで1本で間に合うドリンクを2本買ったりしています。
荻原 そういうのがいちばんよくないと思います(笑)。
賢いポイ活には選択と集中が大事
――だいぶ暮らしに浸透してきたポイントですが、賢くポイ活をするにはどうすればよいでしょうか?
荻原 まず、ポイントを上手にためようと思うなら、いろんなポイントカードを作らないこと。たとえば飛行機に乗るならJALかANAかどちらかを選ぶ。鉄道系のクレジットカードなら、自分が通勤通学に利用している路線のカードがいいですし、コンビニなら、セブンイレブンもローソンもファミリーマートもというのではなくて、できるだけ選んだ方がいいですね。自分がいちばん使うところのポイントの方が、ためやすいし使いやすいですから。
――なるほど。選択と集中がポイントをためるコツですね。買いものをするときはどうでしょうか?
荻原 ひと口に買いものといっても、コンビニでの少額の買いものもあれば、パソコンや家電など高額商品の購入もあるし、いろいろなケースがあります。TPOに合わせて使い分ける方が良いと思います。
また、自分の生活を見直して、いちばん利用しているところはどこかを考えてみるのも良いでしょう。たとえば、ネット通販でしか買いものをしないという人が、スーパーのポイントカードを持っていてもしょうがないですし、飛行機に乗らない人はマイレージをためることもないので、わざわざJALやANAのカードを作る必要はないです。
年に数回しか使わないようなところのポイントは、使う前に期限切れになってしまうのがオチです。自分のライフスタイルを見直せば、どうすれば効率的にポイントをためたり使ったりすることができるか見えてきますよ。
――ほかにもポイ活をする上での注意点はありますか?
荻原 先ほども申しましたが、ポイントには利用期限があります。セゾンカードの永久不滅ポイントのように期限がないというポイントもありますが、ほとんどのポイントは付与されてから2年以内とか、最終利用より1年以内などといった期限が設けられています。私は期限切れで消滅するのが嫌なので、ポイントをもらったらすぐ使ってしまいますけど、ポイントをためてから使おうという人は、利用期限をチェックすることをすすめます。またポイント事業のほとんどは民間企業が行なっているので、そこが経営破綻したらためていたポイントも戻らないものと思った方がいいですね。
――銀行預金のように政府がポイントを守ってくれることは、まずあり得ないでしょうね。
荻原 ええ。会社もポイントも永久不滅はほぼないですから。ほかにもポイントカードを作る際に要求される個人情報にも、注意を払うべきです。あとからフィッシングメールやジャンクメールが送られてくるって嫌じゃないですか。

ポイ活でライフスタイルの見直しを
――その一方で、まったくポイ活をしないという人もいますけど、そういう人もポイ活をやった方がいいですか?
荻原 別にやらなくてもいいという人は、やる必要はないんじゃないですか。繰り返しになりますが、ポイントは付いたらラッキーぐらいに思った方がいいというもので、ポイントの獲得を目的とするのは間違っています。
ポイントは便利だな、有利だなと思う人が使えばいいんですよ。だから必ずしもポイ活をしなければならないというものではありませんが、もしこれから始めたいという人がいれば、nanacoやPontaなどのコンビニのポイントカードがいちばん手軽で、使いやすいでしょう。年会費や入会金もタダなものもありますし。
――荻原さんはJALカードやビックカメラカードなどを利用されているとのことですが、クレジットカードの選び方や、クレジットカードでポイ活をする際の注意点を教えていただけますか?
荻原 欧米ではキャッシュレスがだいぶ普及(※)しているので、海外旅行に行く人は少なくとも1枚はクレジットカードを持っておいた方がいいでしょう。でも年会費がかかるものもあり、ポイントも分散するので、何枚も持たないようにすべきですね。初年度タダという言葉に乗せられてクレジットカードを申し込む人がいますけど、2年目になって年会費のことを忘れて、知らないうちに口座から引き落とされていたということもよくあることですから。
※2020年度において、日本のキャッシュレス決済比率は32.5%だが、アメリカは55.8%、イギリスでは63.9%なのだという。
参考:「キャッシュレス更なる普及促進に向けた方向性」(経済産業省)
――最近、ゴールドカードがよく話題になっていますけど、そちらはどうでしょうか?
荻原 外国ではプライベートジェット機を買うときにゴールドカードで支払うというような使い方をされていますけど、日本では9割の人は持つ必要がないと思いますね。付帯するサービスが自分に合えばいいですが、ほとんどの人は1万円以上の年会費に見合うほどのメリットが得られないですよ。本当の富裕層ならともかく、普通の人は普通のカードでほとんどの用が足ります。
――無理して見栄を張る必要はないということですね。
荻原 上手にポイントをためたり使ったりするためには、日々の暮らしに無理や無駄がない方がいい。ポイ活することで、自分のライフスタイルを見直すきっかけになったらいいなと思います。
