割賦販売法の改正内容とは?加盟店が対応すべきことをわかりやすく解説

割賦販売法と法の改正内容を説明

割賦販売法は、販売者と消費者双方の利益を守るためのルールです。

商品やサービスを分割で販売する割賦販売において、消費者の保護および事業者の育成を図ることを目的とした法律です。

近年の割賦販売法の改正内容は、クレジットカードに対する消費者の不安を軽減するものでした。

クレジットカード決済を導入している事業者は、加盟店調査やセキュリティ対策などへの理解を深め、安心・安全にクレジットカードが利用できる環境を整えましょう。

出典:経済産業省|割賦販売法

この記事で分かること

  • 割賦販売とは商品やサービスを分割で販売すること
  • 割賦販売法とは消費者を守るための法律で、近年頻繁に改正されている
  • 割賦販売法のおもな改正内容は、情報漏洩・不正利用の防止など、消費者の安心につながるもの

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割賦販売法とはどんな取引が対象になるのかをわかりやすく解説

割賦販売法とは、割賦販売の取引を公正にすることを目的に、1961年に制定された法律です。2018年と2021年に改正割賦販売法が施行されるなど、消費者を守るために近年頻繁に改正されています。

まずは「割賦販売」とはどのような販売方法なのか、また法律が適用される取引について詳しく解説していきます。

割賦販売とは

  • 代金を2ヶ月以上の期間、3回以上に分割して支払うことを条件に販売をすること
  • クレジットカードによる支払いで販売をすること

割賦販売とは、代金の支払いを2ヶ月以上の期間にわたって3回以上に分割して支払うことを条件に商品やサービスを販売すること、およびクレジットカードによる販売をいいます。

クレジットカードにおいては、2ヶ月を超えての1回払い、2回払いも対象になっています。

出典:経済産業省|割賦販売法について(後払い)

割賦販売法の目的

割賦販売法は販売者と消費者の利益を守るためのルールです

割賦販売法は当初はクレジットカード産業の発展や育成を目的に制定されました。
以後は、消費者保護のために何度か法改正が行われています。

割賦販売においては、販売者と消費者のそれぞれに次のようなリスクがあります。

    割賦販売におけるリスク

  • 販売者

    代金が最後まで支払われない

  • 消費者

    本当は必要のない商品や問題ある商品を割賦で購入してしまう
    手数料など割賦販売の条件の説明を受けずに契約してしまう

割賦販売法は、割賦販売におけるリスクを軽減するためにルールを整備しています。そのことによって、販売者と消費者双方の利益が守られるのです。

2018年の法改正の施行では、消費者が支払い能力を超えない範囲でクレジットの利用ができるよう、クレジット会社に「過剰与信防止義務」が課せられました。

審査の際には個人信用情報を確認し「支払可能見込額」を調査することなども義務づけられています。

また、2018年に施行された改正割賦販売法では、個人情報保護やセキュリティの強化なども決められています。

クレジットカードのショッピング機能の分割払いなどに割賦販売法が適用される

割賦販売法におけるクレジットカードの適用範囲

割賦販売法が適用される取引として、クレジットカードのショッピング機能を利用した分割払いなどが挙げられます。

クレジットカードのショッピング機能を利用し、以下の方法で買い物をすると割賦販売法の対象になります。

  • 2回払い
  • 分割払い
  • リボルビング払い
  • ボーナス一括払い
  • ボーナス分割払い

ボーナス一括払いは分割で代金を支払っているわけではありませんが、支払いが後払いになるという点では分割やリボと同じですので割賦販売法の対象です。

クレジットカードで買い物をして割賦販売法の対象にならないのは「翌月一括払い」のみとなっています。

キャッシング機能の利用は対象外

クレジットカードにはカードを使って買い物ができる「ショッピング機能」とは別に、現金を借りられる「キャッシング機能」があります。

キャッシング機能の利用分は割賦販売法の対象ではありません。

キャッシングはクレジットカード会社が貸金業者として貸金業法に基づき金銭を貸しつけるため、カードローンなどと同じ「貸金業法」の規制対象となります。

そのため、ショッピング機能とは異なり「借入金額の上限は年収の3分の1まで」という総量規制の対象になります。

その他割賦販売法が適用される取引

この他に割賦販売法が適用される取引として「ショッピングローン」が挙げられます。

ショッピングローンとは、信販会社と提携している店舗で家電や自動車などの高額商品の購入代金を信販会社から借りて購入する方法です。

例えば、分割でスマホを購入するケースなどではショッピングローンを利用しています。

違反した場合の罰則

割賦販売法では違反者に対して業務改善命令や業務停止命令を出すことができます。

これらの命令に反して業務を継続した場合には、次のような罰則が設けられています。

違反内容 罰則
業務停止命令に係る違反 2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金
業務改善命令に係る違反 100万円以下の罰金

事業者は割賦販売法に違反すると、業務停止や業務改善の行政処分がなされ、営業ができなくなってしまいます。

そして、行政処分に反して営業した場合には、最悪のケースとして懲役刑が課されるリスクもあるのです。

他にも次のような罰則も設けられています。

  • カード会社の社員が悪用目的で顧客のクレジットカード番号を盗んだ場合

    → 3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金

  • 信用情報機関から得た情報を審査以外の目的で第三者へ漏らした

    → 2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金

割賦販売法は消費者を守るルール

割賦販売法は、消費者を不正な販売などから守るためのルールです。

具体的には次の2つのルールを設けて消費者を守っています。

  1. クーリング・オフ
  2. 支払停止の抗弁権

それぞれのルールについて詳しく解説していきます。

1.クーリング・オフ

クーリング・オフとは割賦販売の申込書面または契約書面などを受け取ってから8日間以内であれば無条件に契約を解除できる制度です。

強引な営業によって仕方なく買ってしまったが、後から「やはりいらない」と考えた場合にはクーリング・オフによって割賦販売契約を解除することができます。

高額商品を購入することが多い割賦販売においては、クーリング・オフがあることによって「購入意思がはっきりしない買い物」から消費者を守ることができます。

2.支払停止の抗弁権

支払停止の抗弁権とは購入した商品やサービスに問題があった場合、消費者が販売店やクレジットカード会社、信販会社からの請求の停止を主張できる権利です。

支払停止の抗弁権は、次のようなケースで主張することができます。

  • 購入した商品が手元に届かない
  • インターネットで見た写真と実際の商品が違う
  • 販売会社が倒産して商品が届かない、サービスを受けられない

割賦販売契約では契約後にカード会社や信販会社から販売店へ代金が入金されます。

代金を受け取った後、商品やサービスを契約どおりに提供しない業者が存在する可能性は否定できません。

そのため、割賦販売においては、購入者は代金だけ支払って商品やサービスを手にできないリスクにさらされます。

支払停止の抗弁権があることによって、「支払ったのにサービスの提供を受けられない」という被害をなくすことができます。

2018年に改正された割賦販売法の2つの目的とは?

割賦販売法におけるクレジットカードのセキュリティ強化

2018年に割賦販売法が施行され、クレジットカードのセキュリティ について厳しい規制が設けられました。
法改正のおもな目的は次の2つです。

  1. セキュリティを高め不正利用や漏洩を防ぐため
  2. 東京オリンピック前にインバウンド需要を高めるため

割賦販売法が改正された2つの目的について詳しく解説していきます。

1.セキュリティを高め不正利用や漏洩を防ぐため

法改正の大きな目的は不正利用対策です。
2021年のクレジットカード不正利用被害額は330億円を超えています。

クレジットカードの不正利用の手口は不正アクセスやスキミングなど多様化しており、クレジットカード業界全体で不正利用対策を行う目的で割賦販売法は改正されました。

2.東京オリンピック前にインバウンド需要を高めるため

2020年に開催される予定だった東京オリンピックも、割賦販売法改正の目的の1つです。

政府は東京オリンピックが行われる予定だった2020年に訪日外国人の大幅な増加を期待していました。みずほ総研によると2020年の訪日外国人観光客数は3600万人になるとの予測も出ていました。(2020年東京オリンピック・ パラリンピックの経済効果

急増する外国人のインバウンド需要を確保するためには、外国人が安全に買い物ができる環境をつくらなければなりません。

セキュリティを向上させ訪日した外国人が安心して買い物できる環境にすることで、インバウンド拡大を図ることも割賦販売法改正のポイントです。

割賦販売法改正は消費者にどのような影響がある?

割賦販売法における消費者に求められるセキュリティ強化

割賦販売法が改正されて、確かにクレジットカードなどの安全性は高まりました。
しかし、その分、消費者には次のような影響があります。

  1. 本人認証や券面認証が求められる機会が増える
  2. 3Dセキュアやセキュリティコードによる本人確認が増える

法律改正によって消費者にどのような影響があるのか、詳しく解説していきます。

1.本人認証や券面認証が求められる機会が増える

消費者はクレジットカードの決済時に本人認証や券面認証が求められる機会が多くなることが予想されます。

法改正によって加盟店側にもセキュリティ対策が求められていることから、店頭で本人確認書類の提示を求められることもあるでしょう。

また、ネットショッピングでの決済においても、クレジットカード券面に記載されているセキュリティコードを入力する券面認証が求められることが多くなっています。

2.3Dセキュアやセキュリティコードによる本人確認が増える

ネットショッピングでは事前に設定した暗証番号を入力しなければ決済ができない3Dセキュアに対応したサイトが増えていくとともに、セキュリティコードの入力は必須となっていくでしょう。

これらの対策によって、クレジットカードが盗難されたり、カード番号を誰かに知られたりしたとしても、不正に決済されることがなくなります。

少々面倒ですが、セキュリティコードの見方や、3Dセキュアによる認証方法などについても理解を深めておきましょう。

割賦販売法改正後の3つのセキュリティ強化とは?

割賦販売法の改正により、セキュリティ強化のための3つの対応が取られています。

  1. クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の登録制度
  2. 加盟店への調査等の義務化
  3. 加盟店における不正利用防止対策

割賦販売法改正によって強化された3つのセキュリティ対策とその効果について詳しく見ていきます。

1.クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の登録制度

加盟店の募集や審査を行うアクワイアラーなどについては、「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」として経済産業省への登録が必要となりました。

この登録を行ったアクワイアラーには、加盟店がクレジットカードの不正利用対策をしっかりと行っているかどうかの調査を義務づけられました。

そのため、加盟店側も不正利用対策をしっかりと行わなければ、アクワイアラーから契約を解除されてしまうおそれがあります。

加盟店契約を解除されてしまうと、クレジットカード決済が使用できなくなるため、加盟店が不正利用対策をしっかりと行うことにつながります。

また、実質的にはアクワイアラーと同等の最終決定権限を有し、加盟店管理を行っている決済代行業者に関しても「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」として経済産業省への登録が義務づけられています。

2.加盟店への調査等の義務化

クレジットカード番号等取扱契約締結事業者として経済産業省へ登録したアクワイアラーは、加盟店の調査が義務づけられています。

加盟店に対する調査・指導項目には次のようなものがあります。

  • クレジットカード番号等の情報管理を行っているか
  • クレジットカード端末のIC対応化などセキュリティ対策を講じているか
  • 消費者とのトラブルはないか

契約締結時にこれらの加盟店に対して調査を行い、不適切だと判断した店舗とは加盟店契約をすることはできませんし、契約期間中に調査した場合に不正利用対策ができていないと判断した場合には加盟店契約を解除しなければなりません。

3.加盟店における不正利用防止対策

割賦販売法における加盟店が行う不正利用対策のポイント

加盟店側も顧客のクレジットカードが不正に利用されないよう、不正利用防止策を取らなければなりません。

不正利用防止対策を行っているかどうかについてアクワイアラーは加盟店に対して調査を行いますが、具体的には次のような内容を調査します。

加盟店が行う不正利用対策3つ

  • 非保持化して情報漏洩を防ぐ
  • ICカード端末を設置する
  • 「PCI DSS」に準拠する

加盟店の不正利用対策について詳しく見ていきましょう。

非保持化して情報漏洩を防ぐ

カード情報の非保持化とは、加盟店が保有する機器やネットワークにおいて、カード情報を保存・処理・通過しないことをいいます。

従来は加盟店で顧客のクレジットカード情報を保存していることもありましたが、法改正によって、カード情報の非保持化が義務づけられました。

非保持化を徹底することで、万が一店舗に不正アクセスがあった場合でも、顧客のクレジットカード情報の流出を防ぐことができます。

ICカード端末を設置する

偽造カードの使用を防止するために最も有効な方法が、ICカード端末を使用することです。

磁気カードの場合、スキミングなどによって偽造カードが簡単に作成されてしまいますが、ICカードであれば偽造されるリスクを大幅に軽減することができます。

なりすましによる偽造カード被害を未然に防ぐため、改正割賦販売法では店舗に設置する決済端末のIC化を義務づけています。

「PCI DSS」に準拠する

「PCI DSS」とは国際ブランド(Visa、Mastercard、American Express、Discover、JCBの5社)が策定した情報セキュリティの国際基準です。

クレジットカード情報を加盟店側で使用する場合には、PCI DSSに準拠することが求められます。

PCI DSSでは次のようなルールが決められています。

PCI DSSのルール

  • 安全なネットワークとシステムの構築と維持
  • カード会員データの保護
  • 脆弱性管理プログラムの整備
  • 強力なアクセス制御手法の導入
  • ネットワークの定期的な監視およびテスト
  • 情報セキュリティポリシーの整備

2021年に施行された改正割賦販売法の内容とは?

ここまでは、セキュリティ強化を目的として2018年施行された改正割賦販売法の内容をおもに解説してきました。

その後、2021年にも少額の分割後払いサービスの登録制度創設や、審査についてデータ等に基づく高度な審査手法を許容することなども盛り込んだ改正法が施行されています。

2021年のおもな改正内容は次のとおりです。

  1. 少額の分割後払い規制の導入
  2. 審査手法の高度化への対応
  3. QRコード決済事業者等のセキュリティ対策強化

1.少額の分割後払い規制の導入

10万円以下の少額後払い決済を行う事業者について、経済産業省への登録制度が設けられました。

近年、Fintech(フィンテック)企業が中心となって少額後払い決済サービスが普及しています。例えばバンドルカードやPaidy(ペイディ)などの後払いチャージなどがこれに該当します。

これらのサービスを提供する事業者には「(資産-負債)≧資本金等×90/100をグループ又は5年以内に達成」などの純資産要件が課されます。

そして、登録した事業者はクレジットカード会社と同様の消費者保護規制やセキュリティ規制が義務づけられます。

2.審査手法の高度化への対応

審査手法についても、高度なデータ化などが進んでいることを鑑みて新たな審査手法について認定制度が導入されました。

過去の利用・返済実績や取引履歴等を分析・解析するなどして、従来よりもより精度の高い限度額を設定することができるようになります。

3.QRコード決済事業者等のセキュリティ対策強化

割賦販売法におけるQRコード決済のセキュリティ強化

QRコード決済事業者やECモール事業者などの顧客のカード番号を管理する事業者に対し、クレジットカード番号などの適切管理が義務化されました。

従来、クレジットカード番号等の適切管理が義務化されていたのはイシュア、アクワイアラー、加盟店だけでしたが、ここにQRコード決済事業者等が追加された形です。

この記事のまとめ

割賦販売法とは商品やサービスを分割で販売する割賦販売において、消費者を保護し事業者の育成を図ることを目的とした法律です。

2018年と2021年に改正割賦販売法が施行されるなど、消費者を守るために近年頻繁に改正されています。

クレジットカード決済を導入している事業者は、加盟店調査やセキュリティ対策などへの理解を深め、安心・安全にクレジットカードが利用できる環境を整えましょう。

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